資産管理法人を設立して、その役員になる大家さんは、「小規模企業共済」に加入することができます。この「小規模企業共済」は有名な制度なので、加入を検討している方もいるかもしれません。
本稿の結論として、私は「小規模企業共済」への加入は不要と考えています。
その理由は、他にもっと稼げる金融商品があるからです。
以下、これに関して解説します。
「小規模企業共済」の概要
国が運営する制度で、自分で退職金を積み立てることができる制度です。
最大の特徴は、「掛金の拠出額を所得から差し引くことができる」という点です。つまり、掛金を拠出すると、個人の所得税・住民税が少なくなるというメリットがあるのです。
月々の掛金は1,000円~70,000円まで設定が可能です。
実際に節税できる金額
例えば、所得金額が800万円で、毎月7万円を拠出した場合の節税額は281,200円(年間)です。
毎月7万円の掛金拠出を20年間継続した場合の節税は、5,624,000円(①)にもなります。税金をこれだけ減らすことができるのは嬉しいですよね。
節税額一覧表
解約時に元本が少し増えて戻ってくる
毎月7万円の掛金拠出を20年間継続した場合の元本は16,800,000円ですが、これを解約した場合に戻ってくるお金(共済金)は、19,504,800円(②)です。
つまり、払った金額よりも2,704,800円(③)だけ増えて戻ってくるということです。
解約時に戻ってくるお金は、中小機構のウェブサイトでシミュレーションが可能です。
ちなみに、解約時に戻ってくる共済金(②)には税金が課税されます。しかし、「退職所得」として扱われる為、「給与所得」などよりも税金がかなり安くなります。
退職時に他の所得が無いと仮定した場合、共済金の受け取り年度に1,298,220円(④)の税金支払いが発生します。
全てを合計すると20年の加入期間で、7,030,580円(①+③-④)だけお得になる計算です。
どうでしょう、なんだかすごくお得に思えてきませんか?
「小規模企業共済」の利回りは低い
このように、一見メリットの多い「小規模企業共済」ですが、利回りはそんなに高くありません。
所得金額が800万円で、毎月7万円を拠出した場合の平均利回りは約3.35%と計算されました。
多くの不動産投資家であれば、この利回りを上回る金融商品をご存じなのではないでしょうか。
もちろん、所得金額が増えればこれより利回りは大きくなりますので、興味がある方はご自身の所得金額で計算してみてください。
ついでながら、所得金額は、給与の額面とイコールではありません。給与の額面金額が1,000万円程度の方であれば、所得は600万円程度になるかと思います(社会保険料、給与所得控除、基礎控除などが引かれるため)。
「小規模企業共済」の最大の欠点
「小規模企業共済」の最大の欠点は、最低20年加入しないと元本割れしてしまうという点です。つまり、一旦拠出した資金が最低20年間も拘束されてしまうということです。
また掛金の支払が苦しくなったら、掛金を減額することが可能ですが、減額した分は加入期間にカウントされない点に注意です。
■減額のイメージ
例えば、10年目に掛金の拠出を7万円→1万円に減額し、19年目に再び掛金を7万円に戻したとします。
この場合、1万円部分は20年の加入期間を満たすものの、差額の6万円部分については、加入期間が11年として扱われる為、元本割れしてしまうリスクがあります。
「小規模企業共済」ではなく、オルカンなどの投資信託等へ投資していれば、資金需要に応じて機動的に解約することが可能です。
不動産投資家であれば、投資信託等で運用しつつ、物件購入の際に頭金が必要になったら解約するというのが良いのではないかと考えます。
貸付制度を利用して投資した場合は?
「小規模企業共済」は、拠出した掛金の範囲内(掛金の7~9割)で、最大2,000万円までを審査なしで借りられるという制度があります。
借入利率は1.5%で、期間満了時には何度でも同じ利率で借入することができます。
この制度を利用すれば、貸付制度で調達したお金を投資に回すことも可能です。
例えば、冒頭で設定した条件で、掛金の7割を利回り5%の投資信託に回した場合、得られるスプレッドは、3.5%です。
その投資は20年後に5,236,594円増える計算となり、これも加味した小規模企業共済の運用利回りを計算したところ、5.1%になりました。
いろいろと手間がかかる割には、普通に投資信託に投資していた場合と大きな差はなさそうです。
注意事項
本稿の考察は、あくまも筆者の私見です。
人によって、リスク許容度や投資商品の選好は異なるため、全ての方に本稿の結論が当てはまるとは思っておりません。
また、あなたの所得金額によっては計算結果が変わってきますので、実際の投資判断に当たってはご自身で計算してみてください。
コラム
2歳になった長男は、まだおむつをしています。
うんちをするとき、ちょっと小難しい顔をして、顔が赤くなるので、「いま、うんちをしているな」というのが直ぐに分かります。
「いま、うんちしたひと?」と聞くと、素直に手を挙げるのが可愛いです。
「うんちをしていない」ときは、そういう仕草をします。
しかし、息子の回答精度は8割くらい(たまに嘘をつく?)で、おむつを確認するとうんちをしている時があります。